僕の所有しているレコードで最も露出と言うか出動と言うか、テレビ番組の素材に使われたレコードは何かと言うと、これはもうダントツで「忠犬ハチ公の鳴き声」のレコードでしょう。もちろんこれは通称ですが。
折角ですので2019年3月現在までに、この「忠犬ハチ公の鳴き声」レコードが登場した情報を記しておきましょう。
2009年(平成21年)8月6日 フジテレビ『めざましテレビ』
2011年(平成23年)4月21日 テレビ朝日『やじうまテレビ』
2013年(平成25年)4月27日 TBSテレビ『世界ふしぎ発見!』
と、4回の登場だったけです。
この中で一番反響がすごかったのは『世界ふしぎ発見!』でしょうかね。もちろん他の朝の情報番組も反響はすごかったですが、世界ふしぎ発見!の場合は春香クリスティーンさんとのシーンを「観ました」と言う率が尋常ではありませんでしたよ。
確か、一番最初の『めざましテレビ』はレコードのみの露出で、他は僕自身の露出ありだったはずです。
こう時系列で見るといろいろ気づくかと思いますが、まず4月21日前後が多いと言う事。これは「忠犬ハチ公の銅像が設置された日」が1934年(昭和9年)4月21日だからであります。8月6日はどうも記憶があいまいで、うんうんと唸りながら調べていたら判りました。リチャード・ギア主演のアメリカ映画『HACHI 約束の犬』の公開が2009年8月8日で、それに関連してお呼びがかかったのでした。
さて、その通称「忠犬ハチ公の鳴き声」のレコードと言うのはこのレコードです。
『純情美談 忠犬ハチ公』 岸一夫 童謡・国松操 伴奏・キクスイトリオ
レーベル:キクスイ 番号:K-101
このレコードは忠犬ハチ公存命中に制作された物と思われ、訓話と童謡によってハチ公のエピソードが綴られた後に岸一夫によって「それではハチ公の本当の声をお聴きください」と紹介されている。
キクスイレコードと言うレーベルはこれ以外に例を見た事が無く、番号も「K-101」とファーストである事から、おそらく第三者による出資で作られたノベルティ性が強いレコードだと思います。
当時こう言ったハチ公にあやかったグッズなどが横行していたと言う事なので、その一種と思われますが、これは先年ぐらもくらぶより発売した『へたジャズ!』でも触れたテーマである「夜店レコード」として売られたのではないかと考えられます。
このレコードで最も重要なポイントは「本当にハチ公の鳴き声なのか」と言う点。「証拠を出せ」と言われたら「タイムマシンで吹き込んでいる所を確認しないと無理」と言うしかないのですが、僕なりの検証では「本物である」と結論づけております。
これは、鳴き声が苦しそうであること。つまりハチ公の実際の死因となった「寄生虫のフィラリアに冒された犬」による鳴き声に似ていると言う事。そして、微かではありますがアルマイト盤からのダビングによるノイズがあると言う事。恐らく渋谷駅頭で一晩中録音機を廻して世紀の瞬間を狙ったのではないかと想像します。
ハチ公は没する前から新聞などのメディアを経て人気となり、その人気から紆余曲折あり存命中から銅像が建てられると言う極めて珍しい事となりました。その紆余曲折の仇花がこの「ハチ公の鳴き声のレコード」となるわけです。
この、ハチ公の存命中に銅像が設置された状況は昭和9年11月公開のP.C.L映画『あるぷす大将』にやや滑稽なシーンとして記録されています。もう25年以上前の日本テレビ『知ってるつもり?!』でもこのレコードと共に紹介されました。
とにかく、この当時の忠犬ハチ公熱は大変な物で、レコードだけでも以下の物があります。
『教訓物語 忠犬ハチ公』 水野草庵子作・主題歌(童謡)佐々木すぐる作曲・稲葉與四郎編曲
解説:谷天郎 唄及台詞:大川澄子・福田信子・佐々木行綱・塚田愛子・外数名 コロムビアオーケストラ伴奏
レーベル:コロムビア 番号:27834
ニットー児童劇団 伴奏:ニットー管絃楽団
レーベル:ニットー(タイヘイ) 番号:S1991
(ニットー原盤のタイヘイ再プレスの可能性あり)
『童謡 忠犬ハチ公』 天笠治朗作詞・清原健介作曲
吉沢園子 オーゴンアンサンブル
レーベル:オーゴン 番号:A5006
ざっと、これだけのレコードを確認しましたが、他にもまだあるようでコンプリートとは言い難いですね。しかし、どれも子供向けとして企画され販売されたもので、それも昭和10年前後に集中しています。
この中でもやはり出色なのは「忠犬ハチ公の鳴き声」のレコードでしょうね。発売当時はひと山あてるつもりだったのかもしれませんが、経緯はともあれ、よくぞハチ公の鳴き声を収録してくれたと、名もない夜店レコードの制作者に感謝したいですね。
(ここまで書いて忠犬ハチ公の命日が3月8日だと気付きました。うーん、もう2日早く投稿すべきでした)